インテリアの巨匠、テレンス・コンランの本
今回の記事は、英国が誇るインテリアデザインの巨匠、テレンス・コンラン氏のこちらの著書を読んで内容をまとめていきます。
コンラン氏といえば、自身が手掛けたインテリアショップ「コンランショップ」を世界中に展開していることでも有名。日本でも、東京や京都などに店舗があります。
私もそんなコンランショップに週1で通うほどのファン。洗練されたそのセンスの良さには通うたびに感銘を受けますが、同時に敷居の高さもなかなかのもの。
1本6000円のハンドソープが売られていたり、ソファーについていた20万の値札が、実はソファでなくソファカバー単体の値段だったり。あまりの衝撃に卒倒して病院に運ばれたこともあります。
(ねーよ)
せめてそのセンスだけでも勉強してみたいと、今回の本を手に取ったのでありました。
本の内容は、どちらかというと普遍的なお話。「ここにはこれを配置して、こうしろ」といった言い方ではなく、「こういうことに気をつけてインテリアを考えましょう」といった基本的な考えがまとめられています。
ですから、目指したいテーマやセンスに関わらず、普遍的に通用する内容ではないかと思います。
もちろん、コンラン氏が厳選するハイセンスなインテリアグッズの紹介も、随所にちりばめられています。
コンラン氏が語る「3つの基本」とは
さて、この本で語られていることの中核にあるのは、3つの基本です。
タイトルにでっかく書かれていますから、もうお気づきの方も多いでしょう。
それは、
PLAIN―平易に、無駄な装飾なく
SIMPLE―シンプルな幸せを
USEFUL―機能的な中に美しさがある
という3つの要素です。決して難しい言葉ではありませんが、この言葉の中にコンラン氏のインテリア哲学が凝縮されています。一つ一つ、言葉をひも解いていきましょう。
”PLAIN”―無駄な装飾を削ぎ落した、ありのままの美しさを
"plain"とは、日本語では「平易な、わかりやすい」だったり、「無地な、装飾のない」といった意味があります。
真っ白なヨーグルトを「プレーンヨーグルト」と言いますから、それをイメージしていただけたらわかりやすいでしょう。
コンラン氏の言う「plain」は、無駄な装飾を削ぎ落とし、素材の質感を感じさせるような、すっきりとありのままのインテリアです。
人間を例にたとえてみましょう。
私たちはいろんな服を着てお洒落をしますが、あまり派手に着飾りすぎると「ごちゃごちゃしてる」「派手すぎ」など、むしろイメージはダウンしがちです。
しかし一方、ギリシア彫刻のように、人間の裸体をありのままに削り出した芸術作品は、傑作として今もその美しさが評価されています。
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インテリアも同じです。
テーブルにしろ、壁にしろ、素材の良さをありのままに生かしたインテリアは、すっきりとした美しさが魅力です。
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ヨーロッパのお城の寝室のように、装飾に贅を尽くした華美でゴージャスなインテリアも美しいですが、正直「ここで暮らすの、疲れるわ」とも思ってしまいます。
出典 https://ameblo.jp/mariemusique/entry-10908547714.html
むしろシンプルで洗練された暮らしこそ、心の安らぎを得ることが出来る気がします。
無垢の木材や金属、タイルなど、素材を最大限に生かしたシンプルなインテリア用品を揃えることが出来れば、インテリアの質感がぐっと上がるはずです。
コンラン氏が付け加えるのは、目先の値段や見た目だけに騙されて、質の悪い粗悪品を買わないこと。
上質な素材を使った製品は、使い込むほどに素材の良さが向上するのに対し、価格や見た目だけにこだわった製品はすぐに劣化し、魅力が失われてしまいます。
コストパフォーマンスにこだわるのは大切ですが、品質を見定める目も重要です。
”SIMPLE”―「居心地の良さ」は五感で感じる
日本語でも普通に使うように、"simple"という単語は、「単純な、簡単な」といった意味がありますね。
コンラン氏が言うシンプルさとは、自然な喜びを感じさせる「使い勝手の良さ」です。
例えば、暖かい日差しが差し込むように設計されたリビングや、ふわふわで肌触りの良いバスタオルのように、その空間、家具によってほっと幸せを感じられるようなことを言います。
疲れて家に帰ってきたとき、身体に馴染むソファに座ると落ち着きますし、良い香りのシャンプーで髪を洗うと、パッと幸せな気持ちになります。
そうした五感に訴える幸せを感じさせるような、居心地の良い雑貨や家具を揃え、空間をデザインすることが重要です。
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これも「plain」と同じように、過度な装飾を加えることは禁物です。ただ贅を尽くせばいいというものではなく、「朝目覚めて、お日さまの光を浴びてすっきり起きた時」のような、シンプルな幸せを大事にすることです。
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”USEFUL”―実用的で機能的な空間こそ美しい
"useful"とは「有益な、役立つ」といった意味があります。要するに、実用的で機能的であるということです。
これはただ単に、「家具や電化製品が機能を満載している」という意味ではありません。あまりに多機能すぎる家電製品を買って、むしろ使い方がわからなくて困ってしまう経験は誰にでもありますよね。
この場合の「機能的」とは、作業のしやすい高さのデスクやキッチン、無駄のない収納など、日常生活を営むにおいて不便のない空間や家具のことを言います。
いくら上質な家具やお家を買っても、階段が狭すぎたり、椅子の高さが低すぎたり……生活するのに不便では、心地のいい生活はできません。
「機能美」という言葉があるように、生活や仕事のために整えられたモノや空間は、自然と無駄が削ぎ落とされて美しいもの。一流の職人さんの仕事場がカッコよく見えるように、実用的なインテリアはそれだけで洗練されて見えるのです。
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要するに、生活の作業動線から無駄を削ぎ落としたものが"useful"といえるでしょう。
他に付け加えておきたい基本
以上の3つが、コンラン氏の言うインテリアの基本でした。
しかし、上の3つだけではやや漠然としすぎていますので、他にも私が本を読んで感じた、重要だと思う点を挙げていきたいと思います。
多くなりすぎた「モノ」はうまく断捨離を
これは世間でも最近よく言われていることですが、モノが多すぎる環境でインテリアを論じることは不可能です。
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モノが多くなれば、収納のための家具も必要になり、何かを探すのも一苦労。
収まりきらなくなったモノはそこらじゅうに散らかり、シンプルもプレーンもクソもありません。視界もうるさくて落ち着かないし、整理や掃除も大変になります。
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それに対し、モノが最小限に抑えられ、綺麗に整頓された部屋では、掃除も楽だし、広々としていて居心地は素晴らしいです。
しかし、モノを減らせというのは簡単ですが、実行するには勇気がいります。
使わないものを処分するとき、「まだ使えるのにもったいない」と思ってしまう気持ちもわかります。しかし、あまり使わないものが家にあることで起きる「損失」も確かにあるのです。
例えば家賃10万円、30平米のワンルームに住んでいたとします。そこにクローゼットに収まりきらなくなった服を入れるため、3平米の面積のタンスを配置するとします。
すると確かに、服は置いておくことが出来ますが、30平米のうち10分の1、つまり家賃に換算すれば1万円分の家の面積が失われてしまいます。
「別に面積を家賃で換算しなくても」と思うかもしれませんが、タンスがある分、部屋が狭くなり、圧迫感が生まれてしまうのは確実でしょう。
つまり、1年に換算すると12万円分の面積を、タンスと洋服のために失ってしまうことになってしまうのです。
そのことを考えると、あまり使わないモノを売ったり、譲ったり、捨てることが、必ずしも損とは限らないといえるでしょう。
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必要なモノは「ディスプレイ」を意識する
断捨離して、モノを増やしすぎないことは確かに大事。でも、暮らしに最低限必要なものはあります。
もちろんそうしたものも、すべて収納にしまい、カーテンなどで目隠しをしておけば空間は広く使えるでしょう。
でも考えてみてください。
洗面所から歯ブラシとハンドソープ、歯磨き粉など、普段必要なものを全部収納に入れてしまったとします。確かに見栄えは新築未入居の綺麗な洗面所に見えます。
でもそうすると、歯を磨くたびに「よっこら」と収納の扉を開き、歯磨きをしたらまたしまう。手を洗った後も同じ。
そんなめんどくさいこと、やってられませんね。
ですから、本当に必要なものは「ディスプレイを意識して」置いておくことを意識しましょう。つまり、「コレクション」のように置いておくということです。
例えば、バーに行くと、いろんな種類のお酒がカウンターの壁に並んでいたりします。
一見モノが多くて目障りですが、世界中のお酒が並んでいる様子はむしろすごくクール。
あまりにカッコよくて、モノが多いことを感じさせませんね。
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それと同様に、モノが増えがちな洗面所やリビングなどの場所でも、ボトルのデザインを工夫したり、タオルのたたみ方を工夫したりするだけで、邪魔になるはずのモノも素敵な空間のアクセントになりますね。
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素材やデザインは様々でも、コンセプトは一貫性のあるものを
さて、最後になりますが、注意しておきたいことは「テーマやコンセプトをは一貫させる」ということです。
どんなデザイン・素材の内装や家具を選ぶかは自由ですし、バリエーションを加えるほうが飽きが来なくて楽しいでしょう。
むしろ「全部真っ白」だったり、すべて「無機質」といったインテリアは、生活感がなさ過ぎて落ち着かず、居心地がよくないことも。
ですから無機質のインテリアの中にすこし木の温かみを混ぜてみたり、ホワイトの中にブラックのポイントカラーを入れたりするのはOKです。
しかし、モダンなインテリアのはずがアンティークの家具を入れてしまったり、和風の要素も入っていたり……と、計画性なしに家具を揃えてしまうと、統一感のないちぐはぐな空間になってしまいます。
インテリアにはいくつものスタイルがありますし、どんなコンセプトにするかはデザインの作り手次第ですが、しっかりと統一性のある、"coherent(一貫した)"インテリアデザインの計画は欠かせません。
実はこの”coherent”、意識つけることでモノを増やさないことにもつながります。
例えば遊園地に行って、派手なキャラクターの柄のかわいいブランケットを見つけたとします。
テーマを意識せず、好きなものを買い集めていれば、「かわいい!」と衝動買いしてしまう可能性も。けれどもテーマを意識し、「これはシンプルなうちのリビングの雰囲気に合わないかもな」と考えれば、ぐっと買いたい欲を抑えることに繋がります。
インテリアのテーマにお困りの場合は、こちらの過去記事もご参考にしてみてください。
まとめ
- インテリアの基本
Plain…素材の良さを生かした、ありのままの空間作り
Simple…居心地よく、自然な喜びを感じる空間作り
Useful…実用的で便利な空間作り
それに加え、私が本を読んで考えた重要な要素は
Reduce…モノは適度に整理する
Display…必要なものは、収納するか「ディスプレイ」を意識して置く
Coherent…空間作りのコンセプトは一貫性を持つ
これらの6つのことを意識するようにしてみましょう。
お読みいただき、ありがとうございました。