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90連敗しても諦めない!文武両道の"弱き"頭脳集団「東京大学野球部」の魅力に迫る。

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東大野球部とは

「判官びいき」という言葉がある。源平合戦ののち、源頼朝の反感を買って追い詰められた弟・義経に、世間が同情を寄せたことに由来する表現だ。このように、圧倒的な強者と弱者が対決する時、弱者を応援したくなるのは世の常と言っていい。

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最近の話で言えば、2018年の夏の甲子園。強豪校・大阪桐蔭が秋田県の無名の公立校・金足農業と決勝で対戦し、世間の大注目を集めたのは記憶に新しい。この時も、連覇を果たした大阪桐蔭を差し置いて、準優勝となった金足農業が喝采を浴び、一大旋風を起こした。

「金足農業」の画像検索結果

https://biz-journal.jp/2018/08/post_24479.html

野球で「弱者」といえば、東京六大学野球における東大野球部ほど、弱者と呼ぶに相応わしいチームはないだろう。六大学リーグにおける連敗記録はワーストの941925年のリーグ加入以来優勝は一度もなく、40シーズン連続最下位という泥沼に沈み続けている。その弱さのあまり、東大が一勝すれば全国ニュースになるほどだ。

「東大野球部」の画像検索結果

http://dailynewsonline.jp/article/971516/

弱さの一因は、チームの根本的な部分にある。全国の野球強豪校から、スポーツ推薦などで選手をスカウトしている他の私立大学と違い、東京大学にはそうしたシステムはない。

それも東大は、全国の秀才のみが入学を許される超難関大学である。野球部メンバーの多くは進学校出身で、甲子園経験者などのいわゆる「野球エリート」は皆無と言っていい。初めから、他の五大学とは圧倒的な実力差があるのだ。

本郷キャンパス外観

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/campus-guide/index.html

関東の他の有力リーグ、例えば東都大学野球では、参加校はレベルによって4部に分けられている。しかし、東京六大学野球には降格などの仕組みはない。

六大学野球で連敗を続ける東京大学には、「伝統に甘んじている」「弱い東大はいらない」といった厳しい言葉すら浴びせられてきた。

https://tokyo-bbc.net/toudai_kyuujou/toudai_kyuujou.html

だがその一方で、東大野球部の人気は根強く、学生やOBの枠を超えて多くのファンがいるのも事実だ。

毎年欠かさずに早慶戦を観戦する六大学野球ファンの筆者であるが、実は東大については「いつも負けているチーム」くらいの認識しか持っていなかった。

たまにでも勝てるチームならともかく、はなから勝利が絶望的なチームのために、わざわざ足を運んで応援しに行く気持ちが理解できなかったのだ。

主力部員が入寮する「一誠寮」。「誠」の字に「はらい」が抜けているのは、初優勝の時に書き入れるためだ。http://tokyo6s.com/team/tokyo.php

しかし先日、神宮球場で秋季リーグの東大戦を見る機会があった。その対戦相手は、2019年秋季シーズンで優勝することになる慶應義塾大学である。

結果は010の大敗。東大は出塁することすらままならず、スコアボードには0が並んだ。予想はしていたが、文句なしの完敗であった。

しかし神宮からの帰り道、私の中にはある感情が生まれていた。それは試合の結果とは裏腹なもので、また神宮に東大野球を見に行きたい、彼らを応援したいという強い気持ちだ。

圧倒的な力量の差

六大学リーグにおいて、東大は掛け値無しに弱い。東大野球部がなぜ弱いのか。その疑問に答えるには、試しに、東京大学のベンチ入りメンバーと他大学のそれを比べてみて欲しい。

例えば、写真に示した法政大学メンバーの出身校は、大阪桐蔭、作新学院、健大高崎など、誰もが知る全国大会の常連校が名を連ねている。

それに対して、東京大学はどうであろうか。湘南、栄光、麻布。まるで、進学塾の合格実績を見ているかのような光景である。部員リストを見ると、文系エリートの集う東大法学部や、日本最難関の東大医学部の部員さえいる。偏差値70以上を誇る東大の部員に、超有名進学校出身が多いのも仕方ない話だ。

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出身校の違いが示すように、東大野球部員の歩んできた道は、他の五大学とは大きく異なっている。

幼い時から野球の英才教育を受けて育った野球エリートたちと違い、彼らの出身高校には有力な指導者が揃っているわけではない。もちろん甲子園に出場できる高校などなく、県大会で早々に敗退してしまう高校がほとんどである。

それに進学校で東大を目指すとなると、野球だけをやっている訳にもいかない。東大の運動会でスタメンを張れるレベルに技術を磨きつつ、学業も超一流のレベルに保たなければならないのだ。

一応、進学校の端くれで教育を受けた筆者であるから、これがどれほど難しいかは容易に想像がつく。ハンデを背負って戦っている分、日々の練習の厳しさも半端なものではないだろう。東大の連敗を嗤うのは簡単だが、彼らがこなしている事は、常人が簡単に真似できることではないのだ。

本当に弱いのか

だが、文武両道がすごいといっても、野球に学歴は関係ない。所属する六大学リーグで最下位を守り続けている事は、野球チームとしてはれっきとした「不名誉」だ。いくら頭が良くても、野球が強くなければスポーツ選手としては意味がないではないか。

そう思った私は、東大野球部のプレーに興味を持った。果たして、彼らが野球エリート相手にどれくらい活躍できるのか。それを確かめるため、私は何度も神宮に足を運んだ。

「神宮球場」の画像検索結果

http://www.meijijingugaien.jp/sports/

 

すると驚いた。結果こそ連敗を積み重ねてはいるものの、彼らはおとなしく負けているわけではない。神宮球場のダイヤモンドで、彼らは躍動していたのだ。

ドラフト指名されている投手の速球を跳ね返し、甲子園スラッガーの鋭い打球を身体を投げ出して守る。相手のエースとは球速が10キロも20キロも違うのにも関わらず、東大のピッチャーは強打者から次々と三振をもぎ取っていた。

「東大 野球部」の画像検索結果

東大卒業後、日ハムへ入団した宮台康平投手(湘南高校出身)

大差をつけられて負ける試合もあったが、9回まで同点、もしくは東大がリードしていた試合もあった。結果こそ「負け」であるものの、実力差を考えれば大健闘すぎるほどの試合内容である。

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絶対的に見て、彼らは決して野球が下手な訳ではない。ただ、相手があまりに強すぎるのだ。しかし、六大学リーグに所属する限り、彼らに逃げ場所はない。毎年、最下位脱出を目指して彼らはもがき苦しんでいるのだ。

東大野球部の魅力とは

私は彼らのプレーを見て、東大野球部に根強いファンがいる理由がようやく分かった。

彼らは学業という壁を乗り越え、見事な文武両道を成し遂げて神宮球場に立っている。しかし、彼らの戦う相手は、今まで見たこともないような巨人だ。

「巨人」たる野球エリート達を相手に、「小人」である彼らは必死に戦う。圧倒的な実力差を認めつつも、それでも諦めず、努力を重ねて挑み続ける。その姿を見て、勇気を貰える人間は少なくはないはずだ。

応援席を率いる東大応援部員。出典 https://todai-umeet.com/article/33264/

強豪を相手にして、弱いチームが活躍できる機会は多くはない。だからこそ、ヒット一本でも東大の応援席は大いに盛り上がる。チャンスになると、応援曲「不死鳥の如く」のコールが地鳴りのように沸き起こるし、得点でもしようものなら喜びのあまり抱擁しあったり、号泣する観客もいる。なぜならそれが、圧倒的な強敵を前に、部員たちのたゆまぬ努力が花開いた瞬間であるからだ。それは、「喜びもひとしお」という生易しい言葉では表現できない。

私は東大の勝利を目の当たりにしたことはないが、感動的な同点劇や大量得点シーンには立ち会ったことがある。その瞬間の歓喜は格別で、思わず快哉を叫びたくなるほどだ。

筆者は東大出身でもないし、東大ナインに知り合いがいる訳ではない。だが、ハンデを乗り越えて努力してきた彼らが強者を相手に活躍する姿は、我々の魂を熱く揺さぶるものがある。

毎年足繁く神宮に通う東大ファンの人々は、きっとこの歓喜の虜になってしまったのだろう。リーグ戦が100試合あっても、片手で数える程しか経験できない稀有な勝利。

その光景といったら、全身に鳥肌が立つような感動的なものに違いない。そんな禁断の果実の味を知ってしまったら、きっとまた取り憑かれたように、球場に足を運びたくなるに違いない。「あの時の歓喜を、もう一度」と。

https://twitter.com/big6_tv/status/1127371428045651969

私はこの記事を通して、最後に伝えたいことがある。

それは今まで、「自分には敵わない」と思って諦めたことの心当たりが一つでもあるならば、神宮で躍動する東大野球部の姿を見てから諦めて欲しいということだ。

圧倒的なハンデを背負いつつも、果敢に強敵に挑み続け、どれだけ負け続けても諦めない。そんな東大野球部の姿は、「チャレンジ精神とは何か」を体現していると言っていいだろう。何かに挫折しかけた時、そんな彼らの背中を見れば、きっと勇気を貰えるに違いない。

毎年春と秋。神宮の杜で行われる六大学リーグ戦で、彼らのひたむきな挑戦は続く。

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