1級1次試験に合格。そして2次は?
前回の記事で、無事に1級の1次試験に合格した私。
難関の1次試験を突破した私は、ついに面接試験に進むことになったのです。
はっきり言って、この時の私は天狗の状態。
というのも、英検の面接試験のハードルはそこまで高くなく、「1次受かれば行ける」的な雰囲気が蔓延していたのです。
実際、3級から2級くらいまでの面接試験は、適当に準備しておけば通った、という感じでした。
もうすっかり、1級に合格した気分になっていたのです。
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1級の2次試験の内容
1級の面接試験で求められるのは、トピックについてスピーチを組み立てる能力。
面接では、「移民を日本に受け入れるべきか?」といった賛否両論あるトピックを5つ提示されます。
問題例
1. Should the Internet be censored?
2. Is adopting orphans from other countries a good thing?
3. Does the media invade the lives of public figures too much?
4. Does history show that people are becoming more civilized?
5. Should Japan allow more immigrants into the country?出典
その中の1つについて、2分間のスピーチを行い、質疑応答を受ける形式です。
「英語でスピーチ!? そんなん日本語でも無理やないの!」
と思うのが普通。
突然、人前で2分間話せと言われたら困るのに、しかも英語でって。
「無理だ……。」
私は心が折れかけました。
けれども、「無理だ」とあきらめている場合ではありません。
そんな時、ふと蘇るある記憶があるからです。
それはアメリカの寮の一室で、空腹に耐えかねて冷凍のままチーズバーガーを齧った暗い記憶です。(第6話参照)
理由をつけて嫌がっていては命取り。やるしかない。
なんとか練習をしようということで、とりあえずトピックをかき集め、1人でスピーチをぶつぶつとつぶやく練習を続けました。
いざ、山手へ
とにかく、面接試験の日にちはあっという間にやってきました。
私は準備も不十分のまま、受験地である横浜・山手にある「聖光学院」へと向かいました。
聖光といえば、神奈川では誰もが知るカトリック系の超エリート進学校。
高級住宅地、山手の丘に建つその姿は荘厳そのもの。教室には、イエス様の肖像が飾られていました。
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面接の陣容は?
会場に案内され、廊下で試験の順番を待ちます。
――そして、いよいよ面接。
1級の面接官は2人。1人がネイティブ、もう1人は日本人。さらに、試験進行を行うスタッフの3人が部屋で待ち構えています。
対するは丸腰の私1人。3人でかかってこられたらひとたまりもありません。
私はドアをノックした拳を固く握り締め、降りかかるパンチに備えてステップを踏みながら入室しました。
(ボクシングじゃねえよ)
1級では、他の級と異なり、発音や流暢さも採点基準に入ります。
そのため、しっかりとネイティヴに伝わる滑らかな英語を話さなければなりません。
試験の結果は……
緊張でがちがちになり、望んだ2次試験。
スピーチの準備は1分間ありますが、そんな短い時間で話すことを考えるのは困難。
言いたいことが定まらず、困惑したままスピーチへ突入します。
結局、大して考えもまとまらず、歯切れの悪い英語と沈黙が交差する最悪な面接試験になりました。
発音などを気にしている暇もなく、必死で2分間の時間を埋めようとしているうちに、スピーチが終了。
すでにボディブローで体力を消耗した私に、面接官から痛烈なストレートが追い打ちをかけて飛んできます。
「あなたは〇〇とおっしゃいましたけど、□□という意見もあると思いますが。そこはどうでしょう」
いや、知らんし。
「あなたはこの問題に対して、どんな解決策があると思いますか?」
「……。」
日本人面接官のフックが炸裂し、卒倒した私が沈黙したところで、審判がゴングを鳴らしました。
(試験官のタイマーが鳴っただけ)
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それから数週間後。
返ってきた結果はもちろん不合格。
判定負けではない、文句なしのKO負けでした。
(だからボクシングじゃねぇよ)
1級の厳しさを、私は再び思い知らされたのでした。
さらに、2回目の受験
しかし、それだけではありません。
話は飛びますが、それから数か月後、再び2次試験を受験することになります。
「今度こそ」と思い、気合を入れて準備していったスピーチ。
前回のように沈黙が支配する時間も少なく、まずまずの出来でした。
「もしかして、受かったかもしれないね」
私は再び、天狗になっていました。さすがに、2次試験で2回も落ちることはないだろう、と。
しかし、現実は甘くありませでした。
なんと、2度目の2次試験もあっけなく不合格。ハガキを手に、私は崩れ落ちました。
高校1年で英検1級合格という夢は、ここに敗れ去ったのです。
しかも、英検の1次試験が免除されるのは1次試験合格から1年間。
次で合格できなければ、再びあの1次試験をパスしなければならないのです。
もう1度あれ(筆記試験)を受けろ、と言われても、受かる気も受ける気もしません。
栄えある1級合格の旅路に、もくもくと暗雲が立ち込め始めました。
「リメンバー・ヤマテ」
それだけではありません。
英検の受験料は、級が上がるごとに高額になります。
1級の受験料は何と、8,400円。
放課後に50円のブタメンを買って喜んでいた高校生の私には、あまりにも大きな出費です。
3回にわたる不合格に、費やした金額は25,000円。
ブタメンでいえば50コ分。
うまい棒およそ250コ分にも及ぶ高額な受験料が、ちょっとした筆記と面接試験のせいで失われたのです。
これには、温厚な私もさすがに黙ってはおられません。
「英検め、人をバカにするのも大概にしろ!」(お前がバカなだけ)
激怒した私は、真珠湾攻撃に憤るルーズベルト大統領さながら、「リメンバー・山手」の標語の下、3度目の正直を目指したのです。
第10話はこちら
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